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更新日:2026年8月6日

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マツカレハ(松毛虫)特集

【毛虫が苦手な方は閲覧注意】

(九州育種場長)

令和7年夏~8年にかけて、九州育種場内の松林でマツカレハが大発生しました。松くい虫被害がなかった時代、全国的にもマツカレハが森林病害虫被害として最大の病害虫の1つでしたが、その後松くい虫被害の激害化が目立つようになったことや、松くい虫防除のための薬剤散布時にマツカレハ幼虫も一緒に駆除されていたため、徐々に目立たなくなっていきました。しかしながら、今も時々大発生して世間を騒がすほか、マツカレハ被害により衰弱した松がマツノマダラカミキリの産卵場所となってしまい、松くい虫被害拡大の要因となることもあります。
当方も、その被害を実地で観察するのは初めてだったので、その一端をお知らせしたいと思います。写真は九州育種場で撮影したものです。
なお、毛虫嫌いの人は閲覧注意でお願いします。

マツカレハの生態

年1~2回発生。年1回の場合は、成虫は7月~8月に現れ針葉上に産卵する。約1週間でふ化した幼虫は集団で新梢上の葉の片側だけを食害する。このため針葉が塊上に褐変して被害が目立つ。成長すると分散して針葉全体を食害する。11月頃樹幹を降りて樹皮の裂目や落葉下で幼虫越冬し、3~4月に樹上に登って再び針葉を食べる。マツ類のほか、モミ、トウヒ、ヒマラヤスギなどの針葉を食害する((社)林業薬剤協会(2000).改訂林木・苗畑の病虫獣害見分け方と防除薬剤.より引用)。

幼虫の背中には毒毛があるため、刺されないよう注意が必要です。また、基本的には夜間行動すると言われておりますが、昼間も写真のとおり食害行動や幹を登り下りしているものが多く見られました。

マツカレハの卵1 マツカレハの卵2 マツカレハの幼虫1 マツカレハの幼虫2
マツカレハの卵。松葉の先に付着。(左:12月上旬、右:7月中旬) マツカレハの幼虫(左:10月、右:4月)
 
食事中の幼虫1 食事中の幼虫2 食害1 食害2
食事中の幼虫
器用に先端からかじっている(4月上旬)
葉の先端から食べ、根元の太い部分は
後回し(4月中旬)
食べるものがなくなると若枝の樹皮まで
食害され、枝先が枯死(4月上旬)
雄花も食害を受けるようです。
幼虫を引き剥がした跡を撮影
(5月中旬)
       
マツカレハの成虫      
マツカレハ成虫・雌(6月下旬)      

九州育種場内での被害経過

場内での被害を認識したのは、令和7年9月下旬頃でした。松がマツカレハにやられているとの知らせがあり、見に行くと距離にして約50m(幅約20m)にかけて葉が茶色に枯れ、緑の葉がかなり少なくなっていました。
九州育種場ではマツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発を行っていることから、場内に松林が多く存在しております。ただ、このときは、驚きはしたものの、薬剤散布により駆除できるものと思っていました。ところが、松の木が密集していたため、林縁部分の毛虫しか駆除できなかったようで、被害は収まらず、そこから周囲への分散も見られました。

被害林1  

葉量が激減、褐変した葉も見られる(9月下旬)

 
被害林2 被害林3
上空から撮影した被害林(令和8年5月下旬)

左:林縁部を除いて葉がほとんど見えない

右:下半分も若齢のマツ林だが薬剤散布により、葉量は少なくなり
ながらも、なんとか生存

 


 

冬は地面や根元、樹皮の間などで越冬するとのことでしたが、熊本の冬は暖かく、12月になっても一向に活動が終わる気配がありません。木を登り降りしている毛虫を潰すと松葉の鮮やかな緑色の内容物がみられるので、この時期でも松葉の食害を続けているようです。

大量の幼虫 被害林分
樹幹を登り降りする大量の幼齢幼虫(11月中旬) 葉を食害され褐変(12月中旬)

 


 

さすがに1月になると、樹皮の間でじっとしている毛虫が多く見られるようになり、時々駆除しておりました。マツカレハが大発生した場合は、コモ巻きも有効かもしれません。

越冬中の幼虫 樹皮を剥がしたところ。その裏に隠れて越冬中
(2月中旬)

 


 

2月下旬、別の林分でも毛虫が大量発生していることが発覚しました。この頃になると、かわいらしく見えていた毛虫が、黒くてとがった毛を持った立派な毛虫に姿を変え、松の木を登り降りしておりました。雨の日に見に行くと幹にほとんど毛虫がいないのですが、晴れた日、特に風の強い日は、葉に付いている毛虫が落下してくるので、根元や幹周辺は毛虫で大渋滞を起こしておりました。
ここの松は樹高15m以上あるので、樹冠まで薬剤が届かず完全駆除できない状況でしたが、周囲に毛虫を拡散させていることから、後日、伐採し薬剤散布により完全駆除を行いました。
毛虫の移動・拡散力はすさまじく、地面を這って、一晩あれば50mくらい離れた被害林分から移動してくることができるようです。薬剤散布で駆除しても2,3日経つと、どこからともなく毛虫がやってくる、というイタチごっこがしばらく続きました。
特に植栽して1,2年しかたっていない幼樹については、葉量が少なく、あっというまに丸裸にされてしまうため、こまめに見回り、薬剤散布に人力駆除も併用しないと守り切れません。

毛虫1 毛虫6 毛虫7 毛虫8
2月末には活動が活発化、3月にはこの状態(3月中旬) 別の区画にも拡散。薬剤散布駆除後1週間もたたないうち再度付着。隣の被害木から移動してきた模様(3月下旬) 大量の毛虫にたかられている松。とりあえず人の手で除去したが、一本の小さな木に200匹以上集合しているものも(3月下旬) こっちの木にも大量に毛虫が付着(3月下旬)
毛虫2 毛虫3 毛虫4 毛虫5
毛虫も大きくなり、毒々しい形態に、オレンジ色のものもいる(4月上旬) 毛虫の運動場と化しているマツの樹幹(4月上旬) 大量の毛虫の糞に覆われた地面(4月上旬) 薬剤散布後の死骸。何千、何万匹という毛虫を駆除するには薬剤散布しか手がないが、高い部分には薬剤が届かないため、完全駆除は困難(4月上旬)
毛虫9 毛虫10 毛虫11 毛虫12
松の新芽に張り付いて一体になって隠れている(4月中旬) 雨の日の毛虫は水玉をまとっているので発見しやすい。水には弱いのか動きが悪い(4月下旬) 脱皮殻と老齢幼虫。背中の黒いとげが
危険そう(4月下旬)
場内保存のヤクタネゴヨウにも大きな毛虫が付着(5月下旬)
ヨコヅナサシガメ 丸裸マツ2 繭 伐採薬剤散布
ヨコヅナサシガメ。マツカレハの天敵の1つらしいが毛虫を襲っている姿は見られなかった(3月下旬) 完全に丸裸になったマツ(4月上旬)
6月になっても新芽がでず枯死を確認
前年の繭。あちこちのマツの枝に付着していることが判明(4月上旬) 拡散を防ぐため、伐採して薬剤散布(4月中旬)
丸裸マツ1 新葉    
毛虫により丸裸にされた幼木(4月上旬) なんとか枯れずに新葉が展開(6月上旬)    

 


 

5月下旬になると、ついに繭化するものも現れました。枝や葉に繭を作ってその中でサナギになりますが、早ければ2週間ほどで羽化するようです。観察したところ、6月中下旬が繭化のピークのようです。小さ目の毛虫についても、繭を作り始めていたので、体の大きさではなく気温などの環境条件により、ほぼ一斉に繭化が始まるのではないかと思われます。
最近になって気がついたのですが、あちこちの松にマツカレハの古い繭が付着しており、令和7年以前から目立たない程度に、広範囲で繁殖していたと思われ、環境条件が整った昨年度に一斉に大発生したのではないかと思われます。
被害が拡大する初期段階で対策をとることが肝要なので、日頃の丁寧な巡視が一番大事だとつくづく思いました。

 

繭2 ヤクタネゴヨウ被害 丸裸マツ林
ついに出来たてのマツカレハの繭を発見
(5月下旬)
ヤクタネゴヨウの被害木。かなりの食害を受けている(5月下旬) 丸裸にされたマツ林(5月中旬)

 

繭3

繭の中身を確認(6月1日)
この時点ではまだサナギになっておらず。一晩経過後、再度繭を作ろうと糸を吐いた形跡があったが動く気配なし、
さらに2日後に見ると繭無しでサナギになっていた。
また、寄生バエの幼虫らしきものが周囲を徘徊。結局、7月中旬時点で羽化を確認できず。

 

繭6 繭5 成虫
繭を作成中の毛虫(6月中旬) 成虫の姿をみるべく、繭を採取してきて観察中
(6月16日)
繭からマツカレハの成虫・雌が出てきました。
採取から2週間で羽化。寄生バエも2匹発生
(6月24日)

 


 

7月に入るとマツカレハの卵とふ化したての幼虫があちこちで見つかるようになりました。
圃場の真ん中にあるマツノザイセンチュウ接種検定用のマツにも小さな幼虫が多数見つかり、量は少ないながらも、かなり広範囲に卵が産み付けられているようです。
引き続きマツカレハとの闘いが続きます。

マツカレハの卵3 マツカレハの卵4 マツカレハの卵5 接種作業中
卵殻と生まれたての幼虫(7月中旬)
マツカレハの卵塊(7月中旬)
すでに一部でふ化が始まっている
生まれたての幼虫(7月中旬)
近づかないと見つけられない
ザイセンチュウ接種作業中、マツカレハの幼虫が多数見つかる(7月中旬)