木材は腐る材料です。では耐久年数は何年なのでしょうか。
自然の中で樹木として育ち、倒れ、朽ちていく木材は、人為に依らず循環する資源です。 この循環の中で、腐るという機能は欠くことのできない性能です。 もし腐る性能が無かったならば、木材は循環しない資源となっていたかもしれません。
循環する資源の一つの姿である樹木から、幹が大きく育った状態で伐採借用してきたのが、木材であると言えるでしょう。
人は、この腐る材料を、腐らない材料として使う術を会得して来ました。 その結果、厳しい自然から身を守ってくれるシェルターの材料として十分な機能を発揮させて、日々の暮らしを支えてきました。
今日の木材を利用する環境は、これら木材の重要な性能と知的資産を無視して、他の材料の土俵に力づくで挑んできた様に思えます。
木材の耐久性は、他の構造材料に比べると高くは無いでしょう。 しかし、「耐久年数が何年」と一言で表現してしまうことは、過去に会得した知的資産を自ら放棄しているように聴こえてなりません。
写真は、手前からホワイトウッド、SPF、スギ。左側下段は室内にずっと置いておいたもの、右側上段は屋外で2年間暴露したもの。ちなみに下敷きになっているのは、10年以上屋外に放置してある丸太組です。
いずれの樹種でも、あまり激しくはありませんが屋外の暴露によって表面部分は風化し、早材(木目のうち柔らかい部分)が若干掘れています。 切断面では、室内に在ったものとほとんど変わり無く見えます。しかし写真に収めた切断面は健全には見えますが、他の部分では一部腐朽が観察されています。 ぼろぼろに崩れた丸太は、腐朽菌に分解され、土に還る途中です。
維持管理に労力を払う、あるいは積極的に腐ることを認める場合はを除いて、屋外で木材を風雨に曝す使い方は、して欲しくないものです。 また、使用条件抜きで耐久性を議論するのは筋違いと言えるのではないでしょうか。