日本各地の農村部にある古民家は知恵の塊である。
なぜなら、定置型農業で同じ土地を繰返し活用しながら、人間の欲求と自然の許容量とをバランスして暮らしてきた日本人の住まいであるから。その住まいは、身近な自然から得られる材料を利用し、幾度かの経験に基づく自然災害に耐えられるように進化してきたものであるから。
自然とのバランスは過酷である。自然の営みの中で定常サイクルを乱さない限界量を超えてはいけないし、その限界量が低い場合には人間側の要求水準を下げざるを得ない。
古民家は日々の営みを便利にしつつも、身近にある自然への負荷を最小限に抑え、かつその恩恵に感謝の気持ちを持って、淡々とそこに在るのである。
森林総合研究所は、森林生態から林産物・地球環境までと幅広い研究分野を持っているが、地球の容量を超えずに人類が存続して行くためにも、小さな環境バランスの手本である古民家から多くを学び取って行きたいと思う。
写真は本年3月に行った茨城県つくば市内の古民家調査の様子。建物構造形式と使われている木材の樹種や強度の調査、木材の使われていた場所の環境調査の他、実際に建物を引張り傾けて風や地震などの外力に対する強さを調査した。