もう1年が過ぎようとしているが、2004/06/12-21の間、WCTE2004の開催に併せて北欧の国フィンランドを旅することが出来た。スイスのモントルーで開催されたWCTE1998に参加し、欧州の木材と木構造物の関わり・歴史的経緯の一端を垣間見たこともあって、気候風土が異なる北欧のフィンランドも見てみたいと思っていたから、逃したくない機会だった。
WCTE2004は、ワールドカップスキーのジャンプ台も在るLahtiで開催され、会場はフィンランドの代表的作曲家Jean Sibeliusの名を冠したSiberius Hallで行われた。古いレンガ造の製材所を改修してできた建物には、ホワイエにあたるフォレストホールやコンサートホールが集成材による木造で増築されている。
フィンランドといえば、木橋業界で知る人ぞ知るビハンタサルミ橋の在る国であり、一般の方には海外製の携帯電話ブランド「Nokia」の母国である。建築界では、フィンランディアホールなどの代表作で知られるAlvar Aaltoの母国として知られるところである。
ビハンタサルミ橋は、宮崎県西米良村に造られた「かりこぼうず大橋」のモデルでもあり、秋田県藤里町に在るの「防中橋」と同じくキングポスト・トラス形式の木橋である。世界最長の木製車道橋は、長さもさることながらフィンランドの道路管理局が管理する主要道に架かっていて、この橋の上を大型トレーラーが行き交っていることは、主要構造材料としての木材の位置付けが確かなことを感じさせる。橋の袂には、バス停があり道の駅のような休憩所も設けられていた。
この橋を目指して橋があるMantyharjuを調べてみると、ラハティから路線バスに乗る方法を教えられ、ホテルでビハンタサルミとラハティ間のバス時刻を調べてもらってどうにか現地に辿り着いた。と言うのも親切な人が多い国民性は、日本人にも嬉しいところだが、フィンランド語はなかなか手強い。たまたま乗り合わせた英語を話せる年配の男性のおかげで、乗るバスも降りるバス停も間違えずに済んだようなものだったからである。
フィンランドの地図 (バーの右上に英語に切り替えられる「Spr??-Kieli-Language」ボタンがあります。)WCTEのコンファレンスツアーは、著名な建築物の観光資源として紹介するArchtoursがコーディネートしており、たくさんの建築物を効果的に見て周ることが出来た。フィンランドと云う国は、行って見ると判ることだが、北欧でもあり冷涼な気候は言うに及ばず、社会基盤施設や構造物を構成する材料は近くにある天然資材を活用していることが特に印象を受けた。町や国土のいたるところで露出している花崗岩の岩盤は、道路の切通部に擁壁が要らず、建設に合せて掘り出したものは、歩道の舗装用のインターロッキングブロックに加工されたり、細かく砕いて砕石や荒目の砂として建設資材になっている。木材は冷涼な気候ということもあって激しく腐朽劣化が進む様子は無く、また国内で産出する銅で板を造り屋根を掛けるなど、身近な天然資源が上手に活用されていた。
最後のなるが、現地の人の話ではFinnish Saunaは単なる施設・装置ではなく、人付合いの基本行事であり文化的性格(Social Event)を持っているようである。多くのホテルで体験できるサウナは、お勧めの体験の一つである。
軽部正彦:「第8回国際木質構造会議(フィンランド・ラハティ)に参加して」