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8月1日に加工技術科の集成加工研究室から構造利用科の接合研究室に配置換えになりました。
その後すぐに短期専門家としてマレーシアに派遣され、9月9日に帰国してから後も、
山積した仕事の処理に追われ続け、最近ようやく落ち着きを取り戻したところです。
配転後、「集成加工の専門家のおまえが何でそんなところに居るの?」という質問を 何人もの外部の方からいただきました。しかし、これは別に奇妙なことでもありません。 実は、私のかつての専門分野が「接合」だったからです。 といっても15〜20年も前の大学院時代のことですから、大した業績があるわけではありません。 活字になった接合関係の業績を文末にまとめておきました。 学会の発表要旨集や報告書などは省いてあります。 メタルプレートコネクターを中心にした接合金物の関係がほとんどですが、 疲労、損傷、時間依存性、LVL(単板積層材)といった構造信頼性や集成加工に関連したキーワードも タイトルの中に含まれています。 このように「接合」に関しては一応の知識と実績があるのですが、15年近くもほとんど 空白状態であったわけですから、木質構造の研究最前線である接合分野で、 これから世界や日本の強豪たちと肩を並べて行くのは大抵のことではありません。 そこで、今のところあまり明確にはなっていないのですが、次のような研究方針を考えています。 一つは、構造信頼性の方法論や概念を接合の研究に取り入れることです。簡単にいえば、 集成加工で看板にしてきた研究テーマ「*木材接着系の構造信頼性の解明」を拡大して 「木材接着・接合系の構造信頼性の解明」にするわけです。少し難解な用語がでてきて恐縮ですが、 これらの用語の解説については、近々新たにページを作成する予定でおりますので、 とりあえずのところはご容赦ください。 なお、*印の文献を見ていただければ、概略を理解していただけるようにはしてあります。 さて、もう一つは、我が国における伝統構法の強度評価、特に地震力に対する特性の解明を 手がけることです。法隆寺をはじめとする大規模な社寺建築が千年以上もの風雪(地震も含めて) に耐えてきたわけですから、その謎を解きほぐそうと考えるのは、現代の木質構造研究者にとって ロマンでもあります。もちろん、この種の研究は新しい軸組構法や国産材利用といったニーズを 焦点においたものでもあります。 ただ、以上の話は私個人の現在の考えであって、研究室全体の方向性は、軽部、原田両研究員の 研究に対するベクトルとの合成によって決まることになります。 集成加工に積み残してきた仕事もたくさんありますし、本年度の接合研究室の仕事は 両氏によって継続されていますので、私としては最近の研究動向について勉強しながら、 今年度末までに研究室としての方向性を明確にしてゆきたいと考えています。 簡単ですが、以上で顔見せ講演とさせていただきます。 |