昨年度、古代伝統架構の耐震要素として検討された軸組部分の傾斜復元力に加え、今年度は、もう一つの耐震性要素と考えられる「土壁」の水平加力実験を行っている。
本実験は、耐震性のみならず施工性について実大規模で推定できる参考資料が殆ど皆無に等しいために、施工性実験としての位置づけについても重要視している。
試験体は、法隆寺等、対象建築物と同年代の建築物の解体修理時に記録された土壁仕様を最大限尊重し推定復原した試験体A、それを今日的な材料と手法を取りいれて現代的にまとめあげた土壁である試験体B、木造建築として確実に耐震性を付与できる実績のある筋かいを用いた試験体Cの3試験体から構成される。試験体A、Bについては施工上や現実性の問題等から傾斜復元力を持つ初重柱と頭貫を加えて構成し、加力実験においても柱軸線上に鉛直力を付加した上で水平加力を行っている。試験体Cは、耐震要素としての性能を確認するために初重柱、頭貫を省き、加力実験時の鉛直荷重も付加していない。また試験体Cの筋かい部材の端部は、昨年度、別途に(財)日本住宅・木材技術センターで実験された炭素繊維によるボルト接合部の補強を行っている。