(研究資料)

造林地の下刈り場面における除草剤TFPの適用性と苗木におよぼす影響

豊岡 洪・管原セツ子

要旨

 この研究は,林地除草剤TFPの効果と,アカエゾマツ,トドマツ苗木に対する薬害との両面から検討して,その結果からTFPの適用性を明らかにしたものである。1)クマイザサに対してTFPは,成分量で23kg/haの少薬量でも強い作用性を示し,処理した3年後になると地上部はほとんど枯死する。地下部に対しては枯殺作用は示さなかったが,処理後3年間は新生器官の発生を抑制する作用が認められた。抑制力,枯殺力は薬量に比例して大きくなる傾向がある。2TFP処理後の林床植生は,クマイザサの枯死にともないエゾヨモギを主とするキク科の陽地生植物に変化し,地上部現存量も増加する。このために群落内の相対照度は急激に低下する。3TFPによる下刈り省力期間は,キク科の草本群落に変化するまでの処理後23年間であり,適用林地は下刈りが終わる23年前の造林地が効果的であろうと判断される。4)アカエゾマツは,TFPに対する抵抗力が弱く,処理方法をいろいろ変えてみても,薬害を回避することができなかった。トドマツは,散布時期によって薬害の発生が異なり,9月下旬以降になると抵抗力を増すが,散布量は成分量で4kg/ha以下が安全性が高い。5)苗木に対する薬害の発現は土壌表層処理による根部からの吸収と,茎葉処理による接触吸収の両作用が認められたが,接触作用をともなうと薬害は激しい。苗木にとりこまれたTFPの残効は長く,薬害の発現後23年間にわたり影響をあたえる。6)造林地の下刈り場面へのTFPの適用は,トドマツ造林地に限定すべきであり,散布量は,成分量で23kg/haと推定される。