瀬尻国有林におけるスギ幼齢林施肥試験
(植栽施肥後19年間の経過)
佐藤久男
静岡県天竜川上流域の瀬尻国有林でスギ新植林分を対象に,30。の斜面に位置するBD型土壌と5〜10。の緩斜面のBD(m)型土壌において施肥試験を行い,肥効の比較調査を行った。
この試験地は施肥設定後19年を経過し,新植時からの試験としては,かなり長年数にわたって実施したものである。
19年間の幹材積,胸高直径などにあらわれた肥効指数は,全体的にはBD型土壌よりBD(m)型土壌の方が大きかった。19年間の幹材積総成長量にあらわれた肥効指数はBD型土壌は110,BD(m),型土壌は128であった。また,施肥による19年間の幹材積増加量は,BD型土壌は約41,BD(m)型土壌は94m3/haであった。
肥効の大きかったBD(m)型土壌では,19年生時の当年生葉のP濃度および着葉量が無施肥区に比べて施肥区では明らかに増大していたことは,施肥林分の炭酸同化作用の増大→幹材積増大につながったものと推定される。
施肥区の19年後の表層土は,無施肥区に比べて全P2O5が明らかに増加を示し,そのうち,BD型土壌では有機態P2O5が,BD(m)型土壌では無機態P2O5がそれぞれ増加していた。同時に行った当年生葉の分析結果からも,P濃度が無施肥区に比べ,肥効の大きかったBD(m)型土壌の施肥区がとくに高い傾向を示し,施肥P2O5が有効に利用されているものと推定された。
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