松枯損木内でのマツノマダラカミキリの個体数変動とその要因
越智鬼志夫・片桐一正
枯損木内でのマツノマダラカミキリの個体数の変動とその要因について,高知県下の主として幼齢激害林分から採取した枯損木によって調査した。
個体数変動は,主として若齢幼虫期,すなわち幼虫が孵化してから材に穿入するころまでの死亡率の変動に依っている。このうち卵期の死亡は,ヒメアリによる捕食,病気と思われるもの,および他の個体による破壊に基づくもの等があり,一般に卵または産卵かみ跡の密度に対する依存性は認められない。しかし,幼虫期以降の死亡は,競争,捕食,寄生および病気によると思われるもので,このうち,えさ場の破壊やかみ合い等競争による死亡は密度依存的である。また死亡の発生率は幼虫が穿入孔を作るころが最も高い。競争以外による死亡は,一般に密度に関係なく生じているが,病気によると思われる死亡は,場所,年,および木によって高い値を示すものがみられる。
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