海岸砂丘のクロマツ林における微生物相
小川 眞
要旨
高密度に植栽された林齢12〜13年生の海岸クロマツ林において土壌微生物相と菌類相の調査を行った。(1)堆積腐植の量は林内で不均一となり,多いところでは菌糸層の発達が著しかった。(2)クロマツの細根は深さ25cmまでに分布し,C層で多かった。菌根を含む細根は深さ5〜10cmで多く,土壌中の菌根菌の菌糸体量もこの深さで増加した。(3)5×5mのコードラート内に発生した菌はチチアワタケ,ハツタケなど8種で,いずれも外生菌根を形成してマット状に広がる生活型を示した。(4)これらの菌の子実体直下の土壌微生物相は種によって特徴的であった。(5)表層土壌の微生物の水平分布は不均質で,その原因の1つはきのこ類の菌糸層に由来すると思われた。(6)土壌断面における微生物の垂直分布は有機物の量に比例して深くなるほど減少したが,季節的変動も大きかった。(7)落葉分解微生物は分解の進行にともなって変化し,新鮮落葉では糸状菌が優占し腐植化した部分では細菌と糸状菌とが増加した。(8)根面の糸状菌相は根の老化にともなって増加し,TrichodermaやMortierellaの出現頻度が腐朽にともなって上昇した。菌根上の糸状菌は少なかった。
以上のことから,菌根菌はクロマツの生長を助けるだけでなく,砂の移動を止める働きをもっており,適度な落葉の堆積はこれらの菌根菌の繁殖を助ける。林内の微生物相の特徴はきのこに主導された形を示しており,植物根と落葉量によって分布が支配されている。
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