エゾユキウサギの個体群動態に関する研究(第1報)

年齢組成と生命表

柴田義春,山本時夫

   要旨

 下顎骨膜帯に毎冬形成される年層の数によって,エゾユキウサギの 年齢を査定し,年齢組成を検討した。自然個体群(560例)の年齢組成は,1年未満の新生個体に著しく 偏っており(68%),最高年齢は,年齢中央値で3.75年,平均年齢は1.14年であり,雌雄の平均年齢に有 意差はみとめられなかった。また,データによる平均残存率は32%,平均死亡率は68%と推定され,生存 数は死亡数を大きく下まわっており,自然個体群の動態は,新生個体数の多寡によって大きく左右され ることが推察された。
 つぎに,自然個体群と実験室個体群(123例)の生命表によって両者の生存を比較すると,出生から繁 殖年齢(生後1年くらい)に達するまでの死亡率は,両者同率で,それぞれ約80%の個体を失うことが推 察された。しかし,残り20%のその後の生存では著しい相異がみられ,実験室個体群の後繁殖年齢(生後 7年以上)まで生存するのに対し,自然個体群では,繁殖年齢の中期(生後4年以下)までが,生存の限 界とみられた。また,生命表による,自然個体群のいわゆる生態的寿命0.83年に対し,実験室個体群の いわゆる生理的寿命は,1.11年であった。

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