山本千秋,福原楢勝
ヒノキとサワラで,自殖による弱勢の発現と後世代への影響,および 種間交雑による優良形質の組合せと雑種強勢の利用について検討するための第一歩として,ヒノキとサワ ラの各3母樹を用いて総あたりの人工交配を行い,自然,自家,種内他家および種間受粉による球果とタネ のできかたの違いを調べた。
母樹および受粉様式別に調べたおもな項目は,結果率,球果の大きさ,球果あたりのタネ数,タネの大 きさおよび充実率である。
結果率は,両樹種とも自然受粉で最も高かったが,自家,種内他家および種間受粉を比べると,ヒノキ では差がなく,サワラでは種間受粉の結果率が低かった。球果の大きさは,両樹種とも自然受粉で大きく, 種間受粉でやや小さかった。球果の形状比,球果あたりのタネ数およびタネの大きさは,樹種間には明確 な差があったが,受粉様式間に差はなかった。ヒノキでは,充実粒と虫害粒に大きさの差はなく,シイナ は小さかった。また,サワラでは,充実粒とシイナに大きさの違いはなかった。タネの充実率は,両樹種 とも自然受粉で最も高く,種内他家,自家受粉の順に低下し,種間受粉の充実率は極端に低かった。しか し,充実率は母樹間,組合せ間で本目当の変動があった。
両樹種の自殖による充実粒の相対的生産能力は,30%を越える値が多く,近親交配によるマイナスの影 響が次世代で発現する可能性は低くないと判断された。また,ヒノキとサワラの種間交雑による充実粒の 相対的生産能力は,正逆とも1〜10%程度であり,雑種の得られる可能性は,ゼロではないが相当低いこと が確認された。
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