小川 眞,山家義人
アカマツ(Pinus densiflora)の2年生苗をポットに植栽し, 塩素酸ソーダ(NaClO3)70%粒剤(75,150,300,600/s),テトラフルオロプロピオ ン酸(TFP)10%粒剤(150s/ha),スルファミン酸アンモン(AMS)70%粒剤(150s/ha)を散布し,アカ マツ苗の生長と菌根の消長および土壌微生物の変動を調査した。NaClO3の150s/ha 以上の高濃度区では地上部の生長阻害が見られ,低濃度区では生長促進が見られたNaClO3の高濃度区では 根の生長抑制があり,菌根形成も阻害されたが,散布9か月後には根の再生と菌根形成がみられた。TFPで は地上部の生長阻害が小さいわりに,根の生長阻害が認められた。NaClO3と同様に 散布9か月後には菌根形成が回復した。AMSでは地上部,地下部ともにほとんど影響が現われなかった。
NaClO3の散布区ではアカマツの根圏の菌糸が散布直後にいったん消え,9か月後か らポット壁にそって再び生長を始めた。高濃度の600s/haでは菌糸の再生長がおくれたが,菌根の種類は 増加した。NaClO3の濃度によって形成される菌根の種類が変化した。
土壌微生物相の変化は使用した土壌によって異なったが,NaClO3を散布した場合の土壌微生物数の変動 には一定の傾向が認められた。全般に散布直後に減少し,2〜3か月後に急増し,6か月後から減少安定する 傾向がみられ,その動きは濃度が高いほど大きかった。細菌と糸状菌の中でもBacillus mycoidesと Trichoderma sp.の変化は大きく,NaClO3 300と600s/haで消失した。土壌微 生物相は散布1年後にほぼ回復したが,NaClO3 75s/haでは細菌が多かった。
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