山口 彰,桜井孝一,須藤賢一
この研究は木質土じょう改良剤製造のために野外堆積中の米ツガ樹皮の 有機成分について,堆積期間および堆積部位別に試料を採って木材分析法によって分析し,樹皮堆肥製造時 における有機成分変化についての基礎資料を得るために行った。
アルコール-ベンゼン抽出物は野外堆積によって減少し,5年堆積物では原試料の1/3以下となった。水抽出 物も同様の傾向を示したが,水溶性無機物,有機物共に堆積の上部から雨水に溶出して順次下方に移動し, 下部に蓄積される状態が認められた。1%NaOH抽出物は大きな変化が見られなかった。主要成分のうち,セル ロースは堆積によって若干相対量が減少したが,堆積物ではホロセルロース中のα-セルロースが減少し,β ‐セルロースが増加する傾向が認められた。ヘミセルロースは堆積によって大幅に減少した。これは微生物 活動によってヘミセルロースが優先的に分解されること,セルロースはある程度分解,低分子化されるが, 分解は著しくは進行しないことを示している。リグニンは堆積物ではいずれも相対量が増加した。今回の試験 方法では各成分の絶対量の変化を求めることはできないが,リグニンの絶対量減少の度合は大きいものではな いと推定され,難分解性であると思われた。
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