黒鳥 忠,河田 弘,小島俊郎
この報文は沖縄の土壌,地形,地質,地史などについての今までの諸研 究者の成果を総合し,さらに筆者らの新しい知見を加えて,同地域に分布する主要な森林土壌の生成 と分類について,総括的な論議を行ったものである。
同地域に出現する主要な森林土壌の中で,赤色土亜群は洪積堆積物,古生層,安山岩質母材に由来 するものに細分し,それぞれの特徴を論じた。古土壌とされているこの亜群の生成時期を洪積世中期 の糸木名段丘形成直後の陸化期に相当する温暖期〔絶対年代(0.38±0.03)×100万年付近〕とし,も し,その後にもこの土壌の生成があったとしても,修飾的なものであろうと推定した。さらに,赤色 土亜群の生成の生物−気候的条件を中国大陸および台湾の赤色土亜群と比較検討を行った。
黄色土亜群および赤色系黄色土亜群の生成過程と黄色土亜群の生成の気候および生物的条件を,赤 色土亜群と同様に比較検討した。
表層グライ灰白化赤・黄色土の生成に関する今までの諸研究者の作業仮説を論議し,それぞれに残 された問題点を明らかにしたが,結論を得るには至らなかった。
暗赤色土群は各亜群ごとに,石灰岩および石灰質・非石灰質混合母材に由来するものに細分し,各 グループの特徴を明らかにした。また,赤色土亜群と同様の手法を用いてこの土壌の生成を検討し, 一部は赤色土と同様の時期に生成されたが,大部分は古赤色土の二次的な堆積による影響の下に,特 殊な母材(主として石灰岩)から供給される豊富な塩基によって特徴づけられるものとした。
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