各種培地で継代培養されたポプラカルスにおける茎葉分化のちがい

斎藤 明,川述公弘

   摘要

 いろいろな無機成分,有機成分ならびにオーキシンを 含む4種類の合成培地を用意し,これに枝の若いじん皮部から誘導されたポプラカルスを継 代培養すると,その後の茎葉分化能力にちがいが生じるかどうかをしらべた。これらの培地 に継代培養してから68日目のポプラのカルスを,カルスからの茎葉分化に効果的であること がすでにしられている分化用培地に移し,2つの培養条件すなわち,(1)30日間の暗処理の のちに57日間毎日16時間蛍光灯(5,000ルックス)で照明した条件と,(2)暗処理をしない で87日間毎日16時間照明の条件で培養した。その結果,茎葉分化の程度は,カルスを継代培 養するために用いられた供試培地間で,また茎葉分化用培地に対する光条件間でちがいがみ とめられた。カルスの継代培養のために用いられた4種の培地のうち,2種の培地がそのあと の茎葉分化に効果をあらわすことがわかった。さらに,茎葉分化の程度はカルスの暗処理に よって高められた。
 また,継代培養のために用いられた合成培地で培養されたカルスから抽出したパーオキシ ダーゼの薄層ゲル等電点電気泳動パターンは,培地によって質的ならびに量的にイソ酵素の 変化を示した。このイソ酵素の変化は,カルス細胞の培養過程での遺伝的安定性との関連で 興味ある問題点を提起する。この遺伝的安定性は組織培養の分野ではもっとも重要な課題で あり,その辺の事情をさらに詳しく解明する必要があると考えられる。

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