(研究資料)

大雪営林署管内層雲峡地区風倒跡地の植生変化

林 敬大,豊岡 洪,佐藤 明,石塚森吉

   要旨

 亜塞帯性針葉樹林が風害によって壊滅した跡地において,その後の 林床植生の変化と森林への発達を調査し,北方森林の生成の法則性を追求するとともに,更新,施業に対 する指針をうる目的で本試験をおこなっている。風倒後26年目までの調査から,つぎのことがいえる。平 坦地形で林床の原型がササであったところは,早いところでは6年,おそくとも10年でササが優占種となる。 そこにおける前生針葉樹稚樹は,上層林冠が完全にとりのぞかれるとほとんど消失する。また先駆性の広 葉樹もササが繁茂するより以前に侵入するか,前生のもの以外は容易に生育しえない。傾斜地形の原型が ゴンゲンスゲ型のところは,前生針葉樹稚樹も多く,それらは風害によって一時的に被度は減じるが,比 較的短い期間に順調な生育を開始し,後継林をめざして徐々に生育をつづけている。蘚類型のところは, 原型の蘚類が消滅しイワノガリヤスが優占しているか,岩礫地のためか後生の広葉樹も侵入がおそく,現 在わずかに亜高木層に達するシラカンバが点在する程度である。オクヤマシダ型のところは,現在クマイ ザサが優占し,前生針葉樹稚樹は風害後4年で生存しえたものは後継樹になりうる資格をもつようである。 北海道の亜高山帯における原植生が破壊されたあと急激に侵入するエゾイチゴは,6年位で最高の繁茂を とげ,それより次第に衰え始め,おおよそ10年で衰退の速度をます。

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