基太村洋子
木材染色には,木材内部へ浸透する染料が必要である。本実験にお いては,市販酸性染料の木材内部への浸透性を評価し,木材浸透性染料を選定するため,浸漬法による一 定条件下での染色を行い,木材内部の染色状態から染料の浸透性を判定した。
実験用の供試材は,シナノキ,マカンバ,センのスライスド単板で,基準染料水溶液が内部まで浸透す ることを確認した単板である。
染料は,金属錯塩染料を含む市販酸性染料で,耐光堅ろう度がJISなどで4級以上を示すもの191種であ る。得られた結果の概要は次の通りである。
(1)染料はその化学構造の相異により,同一樹種においても木材内部への浸透が異なり,木材の選択的 吸着の強い染料ほど木材内部に浸透しにくい。
(2)木材内部への染料の浸透は,同一染料でも樹種により異なる。それは木材組織の構造と木材の界面 化学的性質の差に起因する。3樹種のうちシナノキが一番浸透しやすい。
(3)配合染料において,構成染料の個々の選択的吸着の強さの違いが浸透速度とも関係し,木材内部の 不均一な染色の原因となる。
(4)本実験条件において“非常に良く浸透する”染料は供試染料191種中,シナノキで60種,マカンバで 18種,センで21種であり,3樹種を通じて10種のみであった。そのうちの金属錯塩染料は非常に浸透しにく く,“非常に良く浸透する”染料は,89種中シナノキに対して10種であり,マカンバとセンに対しては皆 無であった。
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