木質パネル構造に関する研究(第3報)

解析的手法による耐力壁の評価法

神谷文夫,平嶋義彦,畑山男,金谷紀行

   要旨

 本報は,面材を釘打ちして構成した耐力壁の性能を合理的に評価する方法の一つとして,面材を張り付けている釘接合部の荷重−変位曲線などから,壁の剪断性能を解析的に評価することを試みたものである。
 対象とした壁は,スギ間伐木の製材で枠を組み,これに厚さ7.5mmの構造用合板を釘打ちしたものである。
 間伐木を利用とした建物では,乾燥に伴う狂いの対策として,未乾燥状態のうちに施工を完了させてしまう方法が採られている。しかしながら,このような施工法は,枠材の乾燥に伴って釘接合部にゆるみを生じ,壁の剪断性能を低下させることが予想される。
 本研究の前半では,釘接合部の一面剪断試験を行って,その接合特性の母集団を推定するとともに,枠材の乾燥による接合性能の低下を調べた。後半では,これらの実験データを基に,耐力壁の剪断性能を計算した。その結果,枠材の乾燥による耐力の低減係数として0.6を得た。また,マルチプルメンバの考え方を導入して,下限品質を考慮した低減は不要であるとの結論を得た。以上から,上記仕様による耐力壁の倍率(許容剪断力)として,2.5を提案した。

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