谷本丈夫
幼齢造林地におけるスギの生長を,雑草木群落との関係で検討した。まず,前報で明らかに した雑草本の群落タイプごとの群落高と群落内の任意の高さの相対照度の関係式およびスギ造林木 の任意の高さの積算葉重の推定式とから,群落内の相対地上高ごとの相対照度と積算葉重とを作図 法によって求めた。さらに圃場における庇陰実験によって相対照度に対するスギの相対生長割合を求 めた。以上の関係から,下刈などで変化する種々の光条件下でのスギの生長の違いを定量的に解析 することを試みた。前報で整理した多くの雑草木群落タイプから,代表的群落としてススキ型,アカガシ 型および両者の混交型をえらび,下刈による群落の再生過程を考慮して,群落内のスギの生長をモデ ル的に検討したところ,実際の生長と良く一致した。スギの生長はスギを取りまく雑草木群落の構成種 の違いや発達の程度によって変化する。例えばススキ型はアカガシ型に比して群落内への透過光が 多く,被覆によるスギの生長阻害が少ない。また,一般にスギの生長阻害はスギ樹冠の約1/2以上が 覆われると急に大きくなり,スギ樹冠と雑草木の相対的位置関係が最も強く影響した。これまでの下刈 などの作業法と比較し,下刈,除伐,つる切り作業は部分的でなく,一貫した体系のもとで考えることが 重要であることを考察し,これらの作業について,その時期,回数,程度などを判断する基準を与え,効 果的作業体系化への基本的資料を得た。
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