スギの枝打ちによる材の変色

竹内郁雄

   要旨

 スギの若齢林分と壮齢林分で枝打ち跡を節解析し,生枝打ちに伴う材の変色を調査した。変色は,枝打ち時に受けた傷により生じる。傷の種類は,枝隆部または幹材部に受けた傷(材部の傷)と樹皮剥離,それに残枝割れの三つに区分できた。この中で,最も大きな発生原因となるのは材部の傷である。樹皮剥離は,材部の傷とともに生じるものが多く,単独によるものは非常に少ない。残枝割れは,枝直径が大きいもので,ナタやオノ打ちの場合に多くみられるが,カマやノコギリ打ちではみられないか,ごく少ない。これらの傷は,枝跡の上方よりも下方に多く生じている。なおこれらの変色は,傷より材の中心部にむかって生じ,枝打ち後の新しい材部には変色は認められない。変色は,変色幅が大きくなると変色長も大きくなる傾向がみられる。この傾向は,枝の上方へ生じた変色と下方へ生じた変色の間に差はみられない。変色の大きさは,材部の傷や樹皮剥離の傷長と関連がみられるが,同じ傷長なら材部の傷によるものが樹皮剥離よりも大きい。変色長や変色面積は,材部の傷長が大きくなるにしたがい大きくなる。変色幅は,材部の傷長がある程度大きくなるとほぼ一定になる傾向がみられる。これらの変色の大きさは,材部の傷長が同じでも若齢林分の枝打ちに比較し,壮齢林分の枝打ちが極めて大きい。この原因は,枝直径の大きさが異なることによる傷面積や傷の深さのちがいではないかと考えられる。
 無計画な枝打ちでは,かえって変色による材の品質低下をまねくので,生産目標に合った計画的枝打ちが必要である。

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