今村浩人,大黒昭夫,金谷紀行
茨城県石岡市の市営住宅4戸を調査した。いずれも29年経過した同じ 間取りの木造平家である。釘を外壁の南京下見板から採取し,目視による5段階法で劣化度を評価すると 同時に,釘近辺の含水率を測定した。南京下見板は,法的規制から新たに使用されることは少ないと思わ れるが,釘の劣化度を見ることによって外壁の劣化が進む部位を予知すること,および経過年数,木材含 水率と釘の劣化との関係を明確にすることは,他の施工法による木造住宅においても必要とされるもので ある。調査箇所として通常最も劣化が著しい壁の下部および垂直方向の分布をみるために北側の壁を選 んだ。壁の下部の釘の劣化度は,家屋および方向により異なるが平均2.8〜4.5であり,北壁では上部から 下部になるにしたがって劣化度が進んでいる。南京下見板の含水率と釘の劣化度の間に直線関係がみら れた。その回帰係数を検定した結果,4戸のうち3戸は同じ回帰係数であるが,他の1戸は異なった回帰係 数をもっているとみなされる。これらの家屋は材料,構造および経過年数が同じであることから,釘の劣化 度と木材合水率の関係には,日当たり,通風などの環境による因子も作用していると考えられる。
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