(研究資料)

ヒノキ林の種子生産量と発生したメバエの消長

桜井尚武

   要旨

 高知県安芸営林署西ノ川山国有林において,林内に落下する種子量とその 散布状態や発芽率などを,近接する三つの壮齢のヒノキ林分で3年間にわたり調べた。また,1979年に発 生したメバ工の発生当年の消長を,同国有林の外分構成の異なる3林分と林業試験場四国支構内の実験林 7か所で調べた。落下種子量には年度により370〜6270粒/uと顕著な差がみられたが,林分間の差は顕著 ではなかった。種子散布のバラツキをシードトラップで回収した量についてみると,豊作年では各林分 とも大きな変動はみられなかった。また,落下量の多い時期ほど変動か少なく,総落下量でみたとき変 動は最小となった。種子散布の状態をMORISHITAのIδ指数で調べてみると,各区 ともほぼ1となり,ランダム分布を示していた。発芽率は豊作年のものが高く,また,落下時期別にみる と落下最盛期のものの発芽率か高い傾向があった。メバエの発生や生存は林床にAo層が厚く堆積した所 で悪く,暗い所で消失率が高い傾向があった。粘土質の土壌では光の強さが,かえってマイナス要因と なるようだ。消失要因としては,粘土質の土壌では,乾燥と雨水の流下による倒伏や流亡による枯死が 目立ち,他の所では,光の不足によって生長か遅れ,雨滴などによる倒伏や根の洗掘による枯死が目立 った。また,生育段階の遅れたメバエが昆虫類によると思われる摂食害を多く受けた。

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