遠藤泰造,小野茂夫,川口利次
昭和50年8月6日,山形県真室川地方に24時間最大雨量と1時間最大雨量が262,58.5mmという集中豪雨が降り,山地崩壊と土石流とが随所に発生した。このため,同地方では人命ならびに諸施設に甚大な損失を蒙った。林業試験場東北支場山形試験地はこの豪雨降域 内にたまたま存在していたので,同試験地の露場と3号沢流域(1.53ha)とにおいて観測された雨量と流量との両資料を用いて,貯留関数法による出水解析を行い,水位上昇期の貯留関数式を求めた。 また,山地崩壊の発生時における流域貯水量を推定した。出水解析の際,損失雨量は既報の経験式を用いて推定した。計算の単位時間(冲)に30,60および120分を採用したとき,各単位時間 の流量(O,mm/冲)とそのときの流域貯水量の計算値(S,mm)との間の数量的関係はO=k Sp,またはO=fS +g の数式で近似的に表した。 冲=1時間の場合,上式中の各実験定数の値は,k =0.0684,p =1.434,f=0.354,g =-0.381である。上記の指数型貯留関数式を二つの流出成分−Manning型斜面流とDarcy型中間流−の和で近似的に表すと,O(mm/hr)=0.1022S +0.0198S 5/3 のようになる。計算から求めたこの豪雨時の流域貯水量の最大値は約58mmで,この出現時刻直前に3号沢流域内に崩壊が発生した。
全文情報(426KB)