火山系暗赤色土の生成ならびに分類に関する研究(第1報)

−天城および熱海地域の火山系暗赤色土の理化学的および鉱物学的性質−

山家富美子,八木久義

   要旨

 暗赤色土群は3亜群に区分され,その中の火山系暗赤色土は火山に よる熱水風化を受けた赤色の母材から生成されたもので,火山性の地層に伴って分布している。この土 壌に関する調査事例はきわめて少なく,その性質さえまだ充分把握されていない。筆者らはまず手初め に下記の2個所について検討した。
 すなわち静岡県下の天城湯ケ島町の南方の火山性丘陵地の変質帯内および熱海市北方の岩戸山中腹の 火山地において,下層が暗赤褐色〜赤褐色を呈する火山系暗赤色土を採取し,それらの理化学的および 鉱物学的性質を調べた。
 その結果両土壌のA0層の堆積状態,表層の土壌構造,CおよびN含有率,pH,遊離鉄の度などは現在の 自然環境条件とより密接な関係が認められた。粒径組成,孔隙組成,塩基置換容量,塩基飽和度,遊離 酸化鉄の生成程度や形態などは,いずれも両土壌の母材である熱水風化を受けた安山岩類および玄武岩 類とより密接に関係しており,両土壌とも褐色森林土地帯内に発達した成帯内性土壌と判定された。ま た両土壌を,それらと形態的に類似する赤色土やその他の暗赤色上と比較すると,遊離酸化鉄の生成や 結晶化の程度ではほぼ軌を一にしていたが,塩基置換容量や塩基飽和度では赤色土より大きいものがあ り,また物理性ではその他の暗赤色土より良好であった。

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