吉野昭一,菊谷昭雄
宝川試験地の初沢流域,初沢2号沢流域および初沢3号沢流域の3流域に ついて,択伐や皆伐の森林処理が暖候期間の流出量変化に及ぼす影響を統計的に解析した。解析には,初沢 流域では1938年から1978年までの,初沢2号沢および3号沢流域では,1957年から1981年までの資料を用いた。
初沢流域では,ブナを主とする針広混交の森林を材積で50%択伐した場合に,択伐期間の平均降水量を用 いて8月から10月までの暖候期間の流出量を計算すると,択伐しなかった場合の平均期待流出量に比較して, 16.6mm,8.2%増加することがわかった。さらに,同流域で森林を皆伐すると,暖候期間の流出量は,森林を 皆伐しなかった場合の平均期待流出量に比較して,41.8mm,22.3%増加することがわかった。初沢2号沢,3 号沢流域は,試験開始前にすでに材積で50%択伐した流域である。2号沢では,約10年後にさらに残存立木を 材積で60%択伐した場合,また,皆伐した場合について,50%択伐期間と比較した。その結果,7月から10月 までの暖候期間の流出量には変化が認められなかった。3号沢流域でも,約10年後にさらに残存立木を材積で 30%択伐した場合について,50%択伐期間と比較した結果,同じ暖候期間の流出量には変化が認められなかっ た。
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