湘南,高麗山地域の富塩基土壌の生成要因と分類学上の位置づけについて(第2報)

分布,粘土鉱物組成,母岩の性質と生成・分類についての考察

森田佳行,大角泰夫,田中永晴

   要旨

 湘南の高麗山地域に分布する富塩基土壌の生成条件を明らかにする ため,本報では高麗山を中心とした周辺地域の土壌の塩基状態等を調べた。さらにこの富塩基土壌の主母 岩である宝永スコリアおよび凝灰岩の性質を詳細に調べた。それらの結果から富塩基土壌の生成機構につ いて考察した。得られた結果は以下のように要約される。
 1)湘南地域で比較的塩基に富む土壌は凝灰岩由来で,さらにその上に宝水スコリアが被覆していた。2) 富塩基土壌の粘土鉱物は2:1型膨潤格子型粘土鉱物および沸石を主要鉱物としており,周辺地域の富塩基 土壌以外の土壌はこれらの粘土鉱物をほとんど合まないか,あるいはきわめて微量しか含んでいなかった。 3)玄武岩質の宝水スコリアは多孔質で風化されやすく,風化に伴って高pH,富塩基条件を作り出すと推測 された。4)高麗山の凝灰質砂岩は2:1型粘土鉱物,沸石類を多量に含み,その粉砕試料は塩基置換容量が 大きく,置換性塩基に富み,塩基飽和度が高いという特異な性質を示した。5)以上の結果から考察すれば, 湘南地域の富塩基土壌の特異な性質は,宝永スコリアの風化によって放出された多量の塩基類が,凝灰岩 の風化に伴って放出,形成された沸石類や2:1型粘土鉱物に起因する高い塩基置換能を持つ材料によって 吸着保持された結果もたらされたものと結論づけた。なお凝灰岩の風化物自身も多量の塩基を保持してお り,スコリアと共に富塩基土壌の生成に関与していることはいうまでもない。

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