佐藤 俊
木質物は堆肥資材として優れているが欠点もあり,未熟な堆肥 を施用すると植物の生育に障害が発生する。したがって熟度の判定が重要であり,そのため本研究で は木質物および畜糞尿との混合物の堆肥化過程における現象を明らかにすると共に,その結果を解析 して熱度判定の基準値を策定することを主目的とした。
木質物の堆肥化過程では,各溶媒抽出物やヘミセルロースの分解が比較的早く,次にセルロースが 分解したが,リグニンの分解はかなり劣った。CECやそのほかの化学的性質についても明らかにした。 堆肥化過程で生成する腐植酸の推移状態と,木質物中の有機成分を使った腐植酸様物質(仮称)の生 成実験から,堆肥化の実態を明らかにした。木質物中の単純フェノール類が植物に対して生育阻害性 を示したが,堆肥化過程で微生物分解され,阻害性が軽減,消失することがわかった。畜糞尿と木質 物混合の堆肥化過程についても,物理,化学的変化を追跡して,その実態を明らかにした。
熟度の基準値を策定するにあたっては,その重点を堆肥を施用した場合植物の生育に障害を起こさ ないこと,堆肥材料の持つ地カ増強機能が一定レベルまで高められていることの2点とした。これま での結果から木質堆肥については,1)施与無機態窒素の有機化率,2)CEC値,3)0.5%NaOH抽出物 含量,4)ヘミセルロース含量の4因子を指標として基準値を策定したが,そのほか4つの参考値も提 案した。畜糞尿・木質複合堆肥については,1)粒径組成,2)NH4−N,NO3−N含量,3)CEC値,4) ヘミセルロース含量の4因子を指標として基準値を策定したが,そのほか2つの参考値も提案した。以 上の基準値および参考値に合格した堆肥でも,なお植物の生育に対する阻害性の有無を確かめるため に,種子や幼植物を用いて生物検定を行う必要がある。
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