遠藤泰造,北原 曜,眞島征夫,阿部和時
面積約5.1haの緩傾斜小流域内に設置された3列16基の観測用浅井戸で, 浅層地下水位を観測するとともに,流域下部に沿った林道側溝の下端の量水堰を用いて,流去する直接流出 量を測定し,降水一浅層地下水貯留一直接流出系に関する実証的研究を行い,以下に述べる知見を得た。融 雪期谷底沿いの各浅井戸には地下水位の上昇が見られたが,尾根沿いの浅井戸は空の状態であった。融雪の 初期から最盛期に向かって谷底沿いの各浅井戸では,水位の上昇,直接流出量は増加を続け,これらの日変 化は次第に顕著となり,融雪最盛期には正弦曲線に類似の日変化を示した。このことから,直接流出量の増 減は水位昇降と対応し,日融雪水流入量≒日流出量,浅層地下水貯留量の日増減量≒0などが確認された。 融雪期の夜間の流量曲線から推定した中間流出の減衰率は約0.03hr-1である。融雪期に谷底沿いの下半部に は,低みに沿って中間流出に基づく地表流が発生し,林道法面から中間流が流出し,林内のU字型歩道にも, 中間流出が集中流去した。豪雨時には尾根沿いの各浅井戸にも,水位上昇が見られ,谷底沿いの各浅井戸で は,融雪期の水位より高く上昇し,特に上部の浅井戸の水位は高く上昇し,谷底沿いの地表流発生区域は上 部に拡大した。中間流出の発生場所は融雪期の場合と共通していた。試験流域では,豪雨時でも,融雪期に も浸透降水が流域浅層に一時的に滞留し,これによる中間流出が直接流出分の主要成分となっていることが わかった。
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