オゾンに対する抵抗性差異に関連したポプラクローンのガス交換反応

角園敏郎,井上敵雄

   摘要

 オゾンは近年発生している光化学オキシダントの主要な成分であり,樹木に可視的あるいは不可視的な 被害をおこす。これらの被害は,植物の種類や生長状態によって違うことが知られており,また不可視害でも生長低下につながることもあ る。本報では,栄養条件を変えて育てた4種のポプラクローン(カマブチ,NR84,NR6,OP26)に0.25ppmと0.5ppmのオゾン接触を環境制御 室で行い,葉面可視被害の発現による抵抗性と,可視被害に先立ってみられる葉のガス交換反応への影響を調べた。
 オゾン処理により葉に可視被害が生じ,その程度はクローン間および栄養条件の違いによって異なった。被害程度から抵抗性を評価する と,NR84とカマブチに比べてNR6とOP29は抵抗性が高く,また,どのクローンにおいても,栄養条件の良い区の個体ほど感受性が高かった。
 ガス交換に対するオゾンの影響は,クローンによって違い,特に光合成速皮とオゾン取り込み速度に違いがみられた。すなわち,オゾン 接触が進むにつれて,カマブチの光合成速皮とオゾン取り込み速度は著しく減少したが,NR6では特に変化はみられなかった。光合成速度 とオゾン取り込み速度の減少は,蒸散速度の変化と対応しないことから,気孔閉鎖に依存するものではないと考えられた。またオゾンの取 り込み総量は,クローン間では抵抗性のNR6に比べて感受性のカマブチの方が大きく,同一クローン内では栄養条件の良い区ほど大きかっ た。以上の結果およびガス拡散抵抗の解析結果から,抵抗性クローンであるNR6は,カマブチに比べて,高い気孔抵抗を維持することによっ てオゾンストレスを回避しえたこと,また栄養条件による抵抗性の違いには,ガス拡散に対する葉肉抵抗の違いが主要因として関与してい たことが示唆された。

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