八木久義
フィリピン共和国パンタバンガン地域では,荒廃した草原状無立木地における 流域管理や木材生産の調和をはかる造林技術の開発やそれらの体系化,およびそれらの技術移転を目的とした森林造 成に関する日比技術協力プロジェクトが進められている。筆者は熱帯草原状無立木地におげる森林造成のための基礎 資料を得るため1980〜1984年にかげて同プロジェクトサイトの土壌調査を行い,同サイトの立地条件を明らかにした。 それらの結果の概要は次のとおりである。
1.調査地の土壌母材としては,第四紀礫層,熱変成岩等に由来する赤褐色砕屑堆積物,閃緑岩ないし石英閃緑岩を主 とする火成岩,第三紀泥岩,第四紀粘土質堆積物,および不定形瘤状物に富む堆積物が重要であり,それらの分布は 地形や地域と密接な関連を有する。
2.調査地の土壌は,全般的に炭素や窒索の含有率が低く,表層の発達が概して不良である。
3.その他の理化学性や微細形態学的特徴は地形や母材の違いによってそれぞれ異なり,塩基置換容量,置換性塩基含 有量,塩基飽和度等が非常に高いものから非常に低いものまで,また,通気透水性が非常に良好なものから極めて不 良なものまで多種多様である。
4.調査地を被覆する草本は主としてサモン(カルカヤ類:Themeda,triandra)およびコゴン(チガヤ類, Imperata cylindricumであるが,前者は比較的瘠悪な立地条件下に,また,後者は比較的理化学性の良好な立地 条件下に優占する。
全文情報(10,865KB)