苫小牧地域におけるストローブマツ等の異常落葉に関する考察

吉武 孝,増田久夫

   要旨

 北海道胆振地方に位置する苫小牧市北西部地域の森林地帯では,1960年代後期から,スト ローブマツ(Pinus strobus L.)が早期に異常落葉する被害が発生した。その後,被害量は1970年代中期をピークに, 徐々に減少している。著者らは,この異常落葉被害の原因究明のために,被害林分を調査した。その結果,ストローブマツの 異常落葉被害は主として,苫小牧地域に霧の多発する7月〜8月に発生し始めることが認められた。そして,針葉の初期被害症 状は,当年生葉の葉鞘内未熟組織が褐変壊死することであることが明らかになった。さらに,異常落葉被害は,ストローブマ ツ以外の針葉樹(ヨーロッパアカマツ,バンクシアナマツ)および広葉樹(ウダイカンバ,シラカンバ,ハリギリ,ドロヤナ ギ,エゾイタヤ,キタコブシなど)においても,発生していることが確認された。一方,異常落葉被害の発生する地域では, 毎年,7月〜8月にかけて,SO2-4 濃度が高く,pHが4.0以下の強い酸性 の霧や雨が降下することが明らかになった。そこで,ストローブマツとシラカンバの苗木に対して,濃度30ppmと100ppmの希硫 酸による人工噴霧実験を行ったところ,両処理区とも異常落葉被害木の症状に類似した被害現象が生じた。しかし,酸性の霧 および雨水の降下地域における林木の異常落葉被害は,今後さらに検討すべき問題と考えられる。

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