戦後のアメリカ林業、林産業の構造変化と わが国への影響に関する研究 第1報

−マクロ的構造変化の諸特徴−

加藤隆

   要旨

 本研究は,1960年代から1980年代にかけて顕在化してきた,アメリカの林業,林産業の マクロ的局面における構造変化の特質を明らかにするとともに,それに規定された同国の大手木材企業の海外市場拡大戦略の 展開が,今後わが国の木材市場にどのような影響を与えると考えられるかについて検討したものである。
 この第1報では,マクロ的構造変化のうち特に際立った事象として次の四つ,すなわち@産業組織の競争的構造から少数の 大手企業による寡占的支配体制への移行,A会社有林を中心とする資源基盤の再充実化と丸太供給余力の急速な増大,B西部 と南部の地域発展格差の拡大による西部の林産業の東部市場からの後退,C世界的にみたアメリカの林産業の国際競争カにお ける長期優位性の確立,をとりあげ,それぞれの経済的特質と背景を明らかにした。さらに,これら四つの構造変化が,1970 年代後半以降,同国の大手木材企業が海外市場の拡大にむけて本格的活動を展開し始める基本的要因になっていることを示し た。

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