山口 彰,桜井孝一,須藤賢一
木質土壌改良材を畑地に使用した場合,木材成分が時間の経過とともにどのように変化す るかを検討するため,地上および地中の使用モデル試験を行った。供試土壌改良材はスギ(Cryptomeria japonica)の こ屑を牛舎に敷込んだ後,堆積発酵させて製造した。これをナイロン布製の袋に入れ,地表面および地中に所定期間放置後回 収し,木材成分の分析を行った。
全体の重量減少率,各成分の減少率はいずれも地中放置物の方が地上放置物より大きかった。灰分は初期に水溶性成分の溶 出によると思われる減少を示したが,その後の変化は少なかった。水抽出物は経時的に減少した。アルコール・ベンゼン混液 抽出物は変化が少なかった。木材主要成分のうち,ヘミセルロースは早い時期から比較的容易に分解減少し,地中3年の試料 では検出できなかった。セルロースは経時的に減少し,地中3年の試料では極めて少量となった。木材中の多糖類は地中で3年 経過すればほとんど消失すると考えられる。リグニンは多糖類より分解が遅く,アセチルブロマイド法によって測定した値で は地中3年の試料で1/3程度に減少しており,残留しているリグニンには縮合型構造が多くなることが認められた。
1%NaOH抽出物より得られる酸性油は,時間が経過しても全量に対して1%程度であって,あまり変化がなく,増加する傾向 は認められなかった。全体の重量減少を考慮すると,絶対量としては減少していることになり,木材に由来する有害成分が土 壌中に蓄積する恐れはないものと考えられる。
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