日本産栽培きのこのプロトプラストの調製と培養(英文)

大政正武,阿部恭久,古川久彦,谷口 実,根田 仁

   摘要

 プロトプラストは,細胞融合や形質転換をはじめとする,きのこ ではこれまで行われていなかった新しい育種法を可能にするものとして,大きな期待が寄せられてい る。プロトプラストの作成と菌糸の再生についてはこれまでスエヒロタケやヒトヨタケ属のきのこな どについての研究はあるが,シイタケ,ヒラ,タケ,ナメコ,マイタケなど日本産の栽培きのこにつ いては研究が少なかった。本研究は,これらの日本産の栽培きのこについて,プロトプラストの調製 法と培養法を検討し,上記の新しい育種法を開拓するための基礎的知見を得ることを目的として行っ たものである。
 日本産栽培きのこ12種の菌糸からプロトプラストの調製を行った。これらにはシイタケ,ヒラタケ, エノキタケ,ナメコ,マイタケ,マツタケ他が含まれる。きのこの菌糸を液体培養し,集菌後,菌の 細胞壁溶解酵素の処理でプロトプラストを得た。市販酵素の組み合せのうち,a)セルラーゼRS,β −グルクロニダーゼ,b)セルラーゼRS,ドリセラーゼ,β−グルクロニダーゼ,c)セルラーゼRS, ドリセラーゼ,ザイモリアーゼ5000の酵素系が良い成績を示した。シイタケ,ナメコ,マイタケ,ア ラゲキクラゲについてプロトラプスト調製に対する菌糸の培養期間依存性を検討した。また系統の違 いによってもプロトプラスト調製は異なった。ノボザイム234とキチナーゼの組み合せはヒラタケ属の きのこに対してきわめて良い成績を示したので,プロトプラスト調製のさらに詳しい条件,すなわち, pH依存性,浸透圧調節剤の影響,処理時問依存性,菌糸培養の培地の影響等を検討した。シイタケと ヒラタケのプロトプラストは培養を行なうことができたので,その条件をさらに検討した。その過程 で,ヒラタケの2核菌糸からプロトプラストを得て培養すると2核菌糸と同時に1核菌糸が再生すること が見出され,2核菌糸の1核化の簡便法として使えることが分った。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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