今村浩人,木口 実,大黒昭夫
木造家屋の外壁に使用された釘の劣化は,家屋の耐久性と密接な関係があり,釘の劣化 を調査し研究することは,家屋の耐久性向上のために意義のあることである。この報告は,関東地方を中心とした数多くの 木造家屋の外壁における釘とその付近の木材の劣化状況を調査し,関連の実験を行った結果をまとめたものである。釘の劣 化程度は,目視による5段階法によった。この劣化度は釘のさび量およびせん断カから求めた釘の有効直径と関係づけられた。 モルタル塗り外壁は木材と釘を壁内に密閉するため,耐久性がしばしば問題となる。モルタル塗り壁内部では釘の劣化度か ら木材の腐朽の有無を判断できる事例がみられた。釘接合部の劣化は,釘の劣化と本材の劣化によるが,材料を限れば密閉 した状態で劣化させた接合部のせん断力は,釘のさび量とその接合部の変位の関数で表せる。モルタル塗り外壁における釘 の劣化度は経過年数の対数と直線関係にある。この関係を利用して木材の腐朽発生の危険性を推定できる。下見板張り外壁 の釘の劣化は,家屋周辺の環境の影響を受けやすい。
一般に外壁の木材と釘の耐久性を向上させるには,雨仕舞を中心とした施工面からの対策と,外壁を高含水率に保たない ような周囲の環境面からの対策が必要である。このようなことから,釘の劣化を抑制する環境を保持することがそこに便わ れている木材の耐久性の向上にもなることを明らかにした。
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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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