神谷文夫
現在,日本で用いられている強カな接合具はボルトであるが,ボルトは 初期すべりが大きいなど欠点が多い。一方,海外ではボルトより高い強度と剛性を持つ接合具として,2種類 の寸法のシアプレートやスプリットリンクが用いられている。本実験の目的は,日本で構造用材として広く 用いられている樹種の表記寸法のシアプレートやスプリットリンクによる接合強度を実験し,大型木構造用 接合具として,その許容耐力を提案することにある。
実験に供した樹種は,ベイマツ,ベイツガ,エゾマツ,スギで,加カの方向は繊維に平行および直角方向 とした。
得られた結果は次のとおりである。
1.シアプレート,スプリットリング接合は,現在,大型木造建築に用いられているM20(直径20mm)前後の ボルト接合より高い強度と剛性を示した。
2.最大耐力は木材比重と高い相関を示した。
3.低レベルのスリップ(接合部の変形)に対する耐力と比重との相関は,スプリットリング接合では高く, シアプレート接合では低かった。シアプレート接合のスリップは主として鋼板添板の変形によるものである。
4.スプリットリング接合の最大耐カは,シアプレート接合のそれの73〜85%であった。実験から得られた 最大耐力をべ一スに,各樹種に対する接合許容耐カを提案した。また,各比重に対する荷重スリップ曲線を統 計学的に求め,接合設計のための資料を得た。
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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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