斜面ライシメーターにおける傾斜別・土層条件別水収支の研究

近嵐弘栄,服部重昭,竹内信治,坪内良夫

   要旨

 斜面ライシメーターを用いて,傾斜地における傾斜度・上層条件の相違が,地表流出・地 下水流出・蒸発散量などに及ぼす影響を試験した。斜面ライシメーターは,一区画の大きさが幅3m,斜面長6m,斜面と直角方 向の深さが2mのコンクリート製で,傾斜度は15°, 25°, 35°の3種あり,いずれも南面している。各傾斜について,砂質ローム, およびロームの2種の土層の厚さの割合を変えて,全体で1.75mの深さに充填した三つの土層タイプがあり,合計9区画からなっ ていて,表面は芝張りである。
 流出量は地表流出がごくわずかで,大部分は地下流出であった。月別にみると,各土層タイプとも,傾斜度の大きい場合の 力が流出量が少ない。同じ傾斜度で土層タイプが異なる場合には,流出量にほとんど差が生じない。年間の水収支では,各上 層タイプとも,傾斜度が大きい方が流出量が少なく,傾斜度間の差は50〜60o程度であった。また,各傾斜度別に,年間の降 水量と流出量との間に,ほぼ線形の相関が認められた。1降雨ごとの増加流出量は,同じ土層タイプでも,傾斜度の大きい場合 の方が少ない。また,同じ傾斜度の場合には,ロームだけの土層の厚さか大きい場合の方が,ハイドログラフのピークが大き く,その現れるのも早い傾向が認められた。
 斜面の傾斜度の違いによる年蒸発散量の差は,斜面の受ける日射量の差から,ほぼ説明できることが明らかになった。

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    −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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