マツバノタマバエの生態学的研究 第3報

加害特性と被害のマツ属の生長に及ぼす影響

曽根晃一

   要旨

 1975年から1983年にかけて京都大学の上賀茂試験地,徳山試験地,滋賀県田上山にお いて,マツバノタマバエの加害特性を調査した。本種の虫えいは,Sylvestres亜節またはLariciones亜節に属する21種類 のマツで観察された。被害針葉は7月末で伸長を停止し,針葉長は無被害葉の約1/2しかなかった。被害葉は11月頃から枯 死し始め,翌年の4,5月に一斉に落下した。被害は,樹体内ではT枝階新梢主軸で最も高く,枝階が下がるにつれて被害 率は低下した。上層の枝階では新梢主軸の被害率が新梢側軸より高かったが,このような傾向は下層の枝階ではみられな かった。また,同一枝階内での新梢の位置(新梢が樹冠の外側に近いかまたは樹幹に近いか)は,被害率に影響を与えな かった。林分内での被害の発生は突発的で,発生期間は短く,急激に終息した。被害の発生期間を通して,激害木は群状 に発生した。激害木群のサイズは被害程度と共に変化したが,林分内での位置は,毎年大きく変化しなかった。マツ属の 生長に対する加害の効果は小さく,樹高,直径,材積生長のいずれの場合も,単年だけの激しい被害では明らかな生長減 退を引き起こさなかった。そして,当年生針葉の50%以上が2〜3年連続的に加害されて,初めて10〜20%以上の生長量の 減少が認められた。また,T枝階新梢主軸への被害集中は,T枝階新梢主軸の枯死の発生率を高めた。以上の加害特性と 個体群動態特性の関連について論議した。

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      −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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