わが国の山地に見られる火山系暗赤色土の諸性質

北海道士別,静岡県天城・熱海,岐阜県小坂および兵庫県香住の例

山家富美子

   要旨

 わが国の火山地には赤色味の強い土壌の点在することが知られており,林野土壌の分類(1975)では,この土壌は 火山系暗赤色土として暗赤色土群の一亜群に位置づけされている。形態的には古土壌である赤色土あるいは塩基性岩や超塩基性岩ならびに炭酸塩質岩を 母材とする暗赤色土に類似していながら,それらとは全く異なった条件下すなわち熱水風化を受けた母材から生成されたと考えられている。しかしこの 土壌の諸性質については不明の点が多く今後の研究を要するとされている。今回北海道士別市,静岡県天城湯ケ島町および熱海市,岐阜県小坂町と兵庫 県香住町の4地域において,局所的に分布している火山系暗赤色土を8断面(玄武岩由来−1,安山岩由来−7)を調査し,それらの諸性質について検討し た。得られた結果は次のとおりである。
 1)pH(H20)の値は低く,y1は高い値を示す。2)土性はかなり埴質である。3)CEC,ex.Ca,ex.Mgおよび塩基飽和度はかなり幅がある。4)遊 離酸化鉄の生成と結晶化はかなり進行している。5)粘土画分中の主な鉱物組成は1:1型カオリン族鉱物,ギブサイト,石英,アルミニウム・バーミキュ ライトで,比較的風化の進んだ段階のものである。6)粘土画分のケイバン比の値には幅がある。
 これらの性質を,他の亜群の暗赤色土および赤色土の性質と比較すると,埴質な土壌である点および遊離酸化鉄の形態に共通点がある。しかし,CEC, 塩基飽和度,ケイバン比に関しては他の亜群の暗赤色土は大きく,赤色土は小さく,火山系暗赤色土は大きいものから小さいものまで種々あることなどが わかった。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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