マツ材線虫病の病原学的研究

清原友也

   要旨

 まつくい虫の寄生・加害を誘発するマツ樹の衰弱の原因 を,樹病学的側面から究明する過程において,マツ枯死木から Bursaphelenchus 属の 線虫が検出された。KOCHの原則に照らして線虫の病原性を検討した結果,本種が激害型マツ枯 損の病原であることを確認した。本種の学名には,1934年アメリカで記載された B.xylophilus (STEINER and BUHRER)NIKCKLE 1970 が採用され,和名としてマツノザイセンチュウが提唱 された。
 本線虫の病原性に関して調査・研究を行った結果,病原力において著しい種内変異が認めら れた。病原力の地理的変異は認められなかったが,林分間変異および同一林分内の枯死木間変 異が顕著であった。交配試験の結果,病原力は遺伝的形質であることが推測された。今後,病 原カの遺伝様式を明らかにする必要がある。
 弱病原線虫をマツに前接種すると,前接種のない対照木に比べ枯死率が軽減する,いわゆる 誘導抵抗性の現象が明らかになった。誘導される抵抗性の度合は前接種する線虫密度に依存し, 前・後接種の時間間隔の影響をうけた。

全文情報(4,003KB)

−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
森林総合研究所ホームページへ