岡野誠一,岩元守男
林野植物に対する放牧家畜の採食嗜好性を検討した。検討された植物数は, 牛で644種(草本植物473種,木本植物171種),馬は645種(草本植物496種,本本植物149種),緬羊では546種 (草本植物406種,木本植物140種)におよび,これを季節別に「好食」,「食」,「撮食」および「不食」の4 段階に区分した。
@被食植物(好食と食)の合計割合をみると,草本植物では牛79%,馬65%,緬羊73%となり,木本植物では牛 が61%,馬52%,緬羊は66%と,全般的に木本植物よりも草本植物が好まれた。また,馬よりも反芻動物である 牛や緬羊の方が採食嗜好性の幅が広かった。
A全般的に高い嗜好性を示す草類は,イネ科,カヤツリグサ科を中心に,マメ科,キク科,イラクサ科,セリ科 などに属しており,木本類としてはヤナギ科,ニレ科,クワ科,ミズキ科などの植物が好まれた。
B一方,不食草類はシダ類をはじめサトイモ科,キンポウゲ科,リンドウ科に多く,木本類では,針葉樹類とツ ツジ科,スイカズラ科,モクレン科に不食が多かった。
C家畜の採食嗜好性は,家畜の履歴や生理的条件はもとより,放牧季節や植生状態など家畜側または放牧地側の 様々な条件によって,きわめて流動的に変化する。一般的に放牧強度が強まったり,飼草量が不足気味であると, 林野植物に対する採食頻度や採食量が高まる。また,放牧地に牧草導入がはかられて植生の単純化が進むと,放 牧家畜は今まで見向きもしなかった野草や樹葉を多食するようになる。
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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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