高密度のアカマツ林の一次生産の解析

蜂屋欣二,竹内郁雄,栩秋一延

   要旨

 アカマツ林の一次生産特性を解析するため,樹種特性をとらえ易い高密度林を選び,純生産と林齢・地位との関係を検討した。さらに,若い20年生の林分で 葉・幹・枝・根・の呼吸消費を調べ,これらの呼吸消費量と純生産量を加えた林分の総生産が各器官に分配される割合を明らかにした。また,高密度アカマツ林で一次生産の経年変化を求め,針 葉樹類のなかでも陽性なアカマツ林の一次生産特性に検討を加えた。
 最多密度のアカマツ林の地上部現存量密度(地上部現存量1上層平均樹高)は,11t/ha・mで一定になり,アカマツの特性値と考えられた。また,高密度林の葉量は林齢とともに増加し,15〜20 年で最大(7.5t/ha)となり,以後減少して壮年期に7.0t/haで安定した生育休止期の新葉率は,地位による変動は少ないが,林齢による変動は大きかった。葉の平均寿命は幼齢期の1年未満から 壮齢期の2年へと変化した。純生産は15〜20年生時にピークをもつ経年変化をし,葉量や葉の能率の変動と対応した。幹生産はピークが明瞭でなく,幹への純生産の分配が高齢まで高く維持され るためと考えられる。純生産とその幹への分配は地位が良いほど高かった。
 20年生林分の呼吸消費量は26〜28t/ha・yrで,葉の呼吸量が全呼吸消費量の53〜55%であった。20年生林分の総生産量(PG)は36〜39t/ha・yrであるが,純生産量は総生 産量の27〜30%に過ぎず,アカマツ林では呼吸消費量が他の針葉樹林に比べて多い。
 高密度のアカマツ林分の呼吸消費量は,純生産量(PN)と同じく15〜20年生時にピークをもつので,合計された総生産量もこの時期にピーク(75〜85t/ha)をもつ。総生 産量は壮齢期に最大値の60〜70%になり,老齢まで低下する。PN/PG比は,35年生ごろまで30%を示し,老齢になっても20%程度を維持していた。一 次生産が最大になる時期は,葉量最大期に一致するが,単に葉量の増加だけではなく,葉の純光合成速度の高い新葉の割合が増加するためであり,一次生産の上で葉齢構成が大きな役割を果すこ とが明らかになった。一次生産の経年変化を調べると,アカマツ林では総生産・呼吸消費・純生産ともに若齢期に明瞭なピークをもち,以後急激に低下して,壮老齢期に安定して行くという特徴 的なパターンを示した。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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