中川伸策
東北および関西産アカマツ天然生母樹からの種子を用いて,設定された岩手試験地 からの16年生家系826個体の繊維傾斜度を測定した。
この形質について産地,家系内および家系間変異,母樹と家系との関係等を検討し,親子回帰および分散成分により遺 伝率の推定を行った。
各家系の最大繊維傾斜度は母樹と同様に幼齢期に出現している。産地別に母樹と家系の最大繊維傾斜度と平均繊維傾斜 度を比べると,関西産の値は両者とも東北産よりやや小さい。母樹と家系の最大繊維傾斜度の変動幅を産地べつに比べる と,東北産20家系のうち母樹より大きいのは3家系であるが,関西産では8家系である。平均繊維傾斜度の場合は東北産で 母樹より大きい値を示したのは3家系で,関西のそれは5家系である。また,上述の最大と平均繊維傾斜度の変動幅は東北 より関西産のものが大きい。
また,繊維傾斜度の値により構造用材への適性があると認められた母樹の家系のうち,約5%の家系が将来とも適性を保 持するものと推定された。親子回帰を2倍して得られる遺伝率は最大繊維傾斜度で東北産が18.0%,関西産が14.0%,平均 繊維傾斜度では,東北産が0%,関西産が21.0%と推定された。さらに分散成分による遺伝率は,最大繊維傾斜度で東北産 が7.4%,関西産25.9%,平均繊維傾斜度では東北産32.0%,関西産が40.2%と推定された。
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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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