三上 進,川村忠士,渡辺 操,貴田 忍,岩崎正明,及川伸夫,野口常介,板鼻直榮,吉村研介
東北地方と関西地方のアカマツ天然林の母樹の種子から育成された自然受粉家系の植栽試験地 のうち,岩手県下に設定された試験地の植栽後15年目の成績を調査し,成長および枝形質について産地間変異・家系間変異・親子 相関を調べ,遺伝率の推定を行った。関西産の家系では生存率・生育が劣り,産地によって環境適応性が異なることが明らかにな った。したがって,成長形質に関する親子相関は,東北産の家系では正の相関を示したのに対し,関西産の家系では有意性のない 負の相関を示した。一方,枝形質については密度効果がみられ,とくに林冠閉鎖が進んでいるプロットの多い東北産では,家系間 分散が小さく有意性も認められなかった。環境適応性と環境要因の影響が産地や形質によって異なるため,遺伝率については多様 な推定値が得られた。遺伝率の推定法としては親子回帰から求める方法と分散成分から求める方法を適用したが,関西産家系の成 長形質については,前者の方法で遺伝率が著しく低く,東北産の家系の枝形質では後者の方法で遺伝率が著しく低かった。しかし, 全体的に見ると樹高および枝の太さの遺伝率が高く,胸高直径その他の形質の低いことが明らかにされた。試験地内の立地差に基 づくデータのひずみの修正を行ったが,修正データによっても解析精度の向上は期待できなかった。
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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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