アカマツ自然受粉家系の樹幹,当年枝,針葉形質に関する変異,親子相関および遺伝率

山本千秋,白石 進,横田 智

   要旨

 東北および関西産アカマツ天然生母樹の自然受粉種子を用いて 設定された岩手県の植栽試験地で,植栽後16年の家系群における樹幹,当年枝および針葉の8形質に ついて,産地および家系間変異,形質の親子相関および形質間相関等を検討し,反復率および遺伝 率を推定した。
 樹幹については,分岐,通直,根元曲りおよび幹曲りの4形質を調べた。産地間で比較すると,通 直な個体は東北産に多く,分岐および幹曲り個体は関西産に多かった。また,東北産の通直性と関 西産の幹曲り性で家系間に有意な差が認められた。家系の反復率は,両産地の分岐および東北産の 根元曲りについてはゼロと推定された。しかし,通直および幹曲りについては両産地を通じて0.45 〜0.63と推定され,アカマツ集団におけるこれら2形質の表現型変異には,遺伝的要因に基づく変異 が比較的大きく寄与していることが明らかにされた。
 当年枝および針葉については,当年枝長,着葉数,針葉長および着葉密度の4形質を調べた。当年 枝長,着葉数および針葉長は,母樹群の産地間比較で認められたと同様に,東北産に比べ関西産の 平均値が著しく大きかった。これら4形質の家系間差異は,東北産の針葉長および着葉密度と関西産 の着葉数でそれぞれ有意であったが,親子相関は両産地の4形質いずれも有意性は認められなかった。 形質間相関では,両産地とも当年枝長と着葉数の相関がきわめて高く,母樹での結果と一致した。ま た,4形質の遺伝率を分散分析と親子回帰の両方から推定したが,当年枝長,着葉数および着葉密度 では,産地および推定方法でかなりばらついた。しかし,針葉長の遺伝率は0.18〜0.38とやや安定し た値をとり,この形質の表現型変異に対する遺伝的要因の寄与が,大きくはないが明確に示された。

全文情報(805KB)

−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
森林総合研究所ホームページへ