(研究資料)

アカマツ自然受粉家系の球果・種子の形質の親子回帰による遺伝率の推定

金指達郎,斉藤幹夫,横山敏孝

   要旨

 アカマツの球果・種子に関する諸形質,すなわち着果数,球果長,球果形状比,球果あたりの 種子数,種子の充実率,1000粒重,の遺伝率を親子回帰から推定した。子供群のデータは,アカマツ材質育種東北試験地(半兄弟家 系,19年生)の間伐木の測定値の家系平均値を用いた。母樹のデータは前報(19,20)に発表されている値を用いた。
 球果あたりの種子数の遺伝率の推定値は,h2=0.95(標準誤差:0.22)で非常に高かった。球果 長ではh2=0.66(0.24),球果形状比ではh2=0.56(0.30)であ った。1000粒重ではh2=0.36(0.13)であったが,親子の平均値間で大きな差がみられた。一方, 充実率については,推定値が負値となったため遺伝率は0と判断されたが,標準誤差(0.93)が非常に大きかった。なお,着果数では 遺伝率の推定値,標準誤差とも極端に小さかったが,これは親子間の着果数の違いが著しいためであり,子供群が若齢の現時点では 親子回帰から遺伝率を推定することは適当でない。
 今回の調査では家系内個体数が家系間で大きく異なっていたので,この違いによる影響を取り除くために,各子供個体とその母樹 との対をデータとした推定(母樹の値を複数回繰り返して用いる)も試みた。しかし,この方法で推定された値は,先にのべた子供 家系平均値と母樹の値を対にしたデータで計算した結果とほとんど変わらなかった。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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