中島 清,新田隆三,藤森隆郎,勝田 柾
スギにおける冠雪害抵抗性品種・系統の選抜,検定に必要な 評価基準を確立するために,サンブスギ,ミョウケンスギ,ボカスギ,ムラスギの4品種について, 短時間に大量の湿降雪をもたらす人工冠雪実験装置を用いて冠雪害を再現し,被害形態と樹冠特性 の関係から抵抗性要因の解析を試みた。人工冠雪実験装置により,サンブスギ,ミョウケンスギ, バカスギで幹折れ,幹の大曲り,梢端曲りのそれぞれ曲型的な冠雪の被害形態を再現することがで きた。一方,ムラスギでは最大66.8sの冠雪が形成されたにもかかわらず,梢端及び幹のわん曲は 認められなかった。積算降雪量と冠雪量との間には,降雪重量が0〜700sの範囲で,きわめて高い 相関をもつ直線関係が認められ,各直線の回帰係数で示される降雪の捕捉効率には,有意な品種間 差が認められた。葉量の個体間を除くため,単位枝葉量あるいは単位葉量当たりの冠雪量(冠雪量 /乾重量)と降雪量との関係から求めた降雪の捕捉効率は,サンブスギのみ有意に高い値となったが, 他の3品種についてはそれぞれの品種間に有意差は認められなかった。これらのことから,降雪の捕 捉率は樹冠全体での捕捉効率と,単位枝葉量あるいは単位葉量当たりの捕捉効率の,少なくとも二 つの要素が関係していることがわかった。また,冠雪量と幹の傾倒・わん曲との関係にも品種間差 が認められ,枝の下垂性を示す指標と考えられる樹冠投影面の変形については,品種間差は顕著で はなかった。一方,樹冠形については,樹冠頂角,枝の着生角度,枝の本数(枝密度),枝葉量の 垂直分布,枝の幹重量に占める緑枝の割合とその分布,梢端部の枝及び幹の直径と幹重量の垂直分 布に品種間差が認められ,とくに樹冠頂角,枝葉の乾重量とその垂直分布が冠雪量に影響を与える 重要な要因であることが明らかになった。
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−森林総合研究所研究報告−
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