林 知行,TAN Yu Eng,宮武 敦
LVLのせん断性能は用いられる単板のせん断性能と接着層のせん断性能とによって決定される。従って,LVLのせん断試験法は その両者の性能を同時にチェックできることが好ましい。従来,ブロックせん断試験法が木材及び接着層のせん断強度の評価法として用いられてきたが,LVLのせ ん断強度の評価法として用いる場合には次のような問題点がある。すなわち,単板内に含まれる節を除去することが困難であること,単板が厚くなればせん断面と 裏割れの位置によって強度値が大きく変化する可能性があること,LVLでは接着層が必ずしも直線的に形成されないため,接着層を正確にせん断面と一致させるこ とが困難であること,接着層が多いため接着性能をチェックするためには多量の試験片が必要であること等である。
そこで,ブロックせん断試験に代わるものとして,短スパンを用いる曲げせん断試験が提案されてきた。この試験法は上記のような問題点を持たないが,スパン −梁せい比,荷重へッドの曲率,荷重の方向等の因子によってせん断強度値が影響を受けるため,評価法として確立されたものにはなっていない。
本研究では,6種類の構造用LVLを用いて曲げせん断試験を行い,これらの因子がせん断強度に及ぼす影響を実験的に検討するとともに,変動の少ないせん断強度 を得るための最も適切な試験条件を求めた。
その結果,次のことが明らかになった。
1. 曲げせん断強度試験によって得られるせん断強度値は,スパン−梁せい比が小さいほど,また,荷重へッドの径が大きいほど高い値を示す。
2. 変動の少ないせん断強度値を得るためには,スパン−梁せい比が3ないし4,かつ,荷重ヘッドの径が50〜100o範囲内にあることが望ましい。
3. 荷重方向と接着層とが垂直な場合(flatwise)では,ほとんどの条件下でせん断破壊が生じるが,逆に平行な場合(edgewise)では,樹種によって曲げ破壊が 生じることがある。
4. 試験片のオーバーハングが試験片の梁せいの1/2から1/1程度であれば,せん断強度値はオーバーハング長さの影響を受けない。
5. 2層おきのバットジョイントを中央部に有する試験体のせん断強度値は,せん断破壊を生じる場合には,バットジョイントのないものの約9/10,曲げ破壊を生 じる場合には約2/3にまで低下する。
6. 曲げせん断試験により得られるせん断強度値は,ブロックせん断試験により得られる値に比べ変動が少ない。
なお,本試験の一部は日本農業規格の制定に際し,基礎資料として用いられた。
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−森林総合研究所研究報告−
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