ヒノキ人工林における下層植物群落の動態と制御に関する研究

清野嘉之

   要旨

 本研究は,照葉樹林帯のヒノキ人工林を対象に,その下層群落の動態を把握し,構造を改善する 方法を明らかにするために行ったものである。下層群落の植被率や葉の生産量,種数などの挙動には光条件が最も効いていた。ついで 乾湿条件が影響を及ぼしていた。そこで,ヒノキの樹冠構造を調ベ,それを基に相対照度の表示方法を工夫した。新しい表示方法は林 冠量を適切に表す。また,間伐や枝打が林冠量に及ぼす影響を予測し,間伐や枝打後の林冠量の経年変化を予測することができる。次 に,MONSI・OSHIMA(1955)の考え方を発展させ,任意の相対照度下の下層群落高の成長 や植被率の増加を推定する手法を工夫した。これらの成果を合わせた下層群落の動態モデルによって,種々の保育・乾湿条件下の林内 相対照度や下層群落高の経年変化を推定し,無処理(非疎開)林分では40年生以降に下層群落高が高まる,林冠疎開によって成長は促 されるが若齢林分では効果が少ない,成長には乾湿条件が影響を及ぼしている,などのことを示した。また,土地生産力の低下を防ぐ ために,下層群落を望ましい状態に変える方法を示した。本モデルは保育・乾湿条件,林齢の異なる様々な林分に当てはまる。これに よって,@下層群落の高さ及び低木層・草本層植被率の変化を推定し,かつA保育履歴及び乾湿条件がそれらに及ぼす影響を評価し, さらに,B下層群落の状態を変える適切な保育方法を検討することがはじめて可能になった。

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−森林総合研究所研究報告−
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